株を買うということには、その値上がり益で利益を出す事以外にも、大きな意味があります
それは、会社の株を買った時点で、その会社の株主になるという事です。
今回は、この株主になる事で与えられる権利について、ご紹介してきます。
株主になることで得る代表的な権利
株主になると、大きく以下の3つの権利が与えられます。
3つの代表的な権利
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剰余金配当請求権・・・配当をくれという権利
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残余財産分配請求権・・・会社が倒産したときに、残りの財産をわけてくれという権利
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議決権・・・会社の経営に口出しをする権利
一つずつ詳しく解説する前に、基本的に株主の権利は「自益権(じえきけん)」と「共益権(きょうえきけん)」の2つの権利に大別する事ができますので、そちらを説明します。
自益権と共益権とは
自益権とは
その権利を行使した際の影響が、その株主個人の利益にだけ影響する権利を「自益権(じえきけん)」と言います。
今から紹介する「剰余金配当請求権」と「残余持参分配請求権」はこの自益権に該当します。
また、この「剰余金配当請求権」と「残余持参分配請求権」は、仮にその会社の株式を1株しか保有していない株主でも行使できる権利である事から、単独株主権と呼ばれます。
逆に、総発行株式のうちの一定割合、又は一定数以上の株式を保有してる株主のみが行使できる権利を、少数株主権と呼びます。
少数株主権の例を上げると、役員が職務の執行に関して不正行為や定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、その役員を解任する議案が株主総会で否決された場合に、総株主の議決権の100分の3以上、もしくは発行済株式の100分の3以上の議決権を6ヶ月前から保有してる株主は、その役員の解任を請求する事ができる「役員の解任請求権」があります。(出典:会社法第854条)
共益権とは
その権利を行使した際の影響が、その会社の株主全体の利益に影響する権利を「共益権(きょうえきけん)」と言います。
自益権は、自らの利益の為に行使する事ができますが、共益権は会社経営への参画を目的とした権利です。
代表的なものは、会社の経営に口出しできる「株主総会における議決権」です。
株主の代表的な3つの権利
それでは、自益権と共益権の違いを理解できた所で、株主の代表的な3つの権利を詳しく紹介していきます。
①剰余金配当請求権
剰余金配当請求権とは、株主総会の決議で配当を出す事が決定した場合に、その配当金を受取る事ができる権利の事を指します。
先程も紹介したように、この剰余金配当請求権は1株でも株式を保有していると権利を行使できる「単独株主権」ですから、株式を1株でも保有していたら配当を受け取る事ができます。
つまり、プチ株やミニ株などの単元未満株でも配当は受け取る事ができます。
剰余金配当請求権は、「利益配当請求権」や「配当請求権」とも呼ばれたりします。
②残余財産分配請求権
残余財産請求権とは、その名の通り、株式を保有してる会社が破産、または解散するとなった場合に、残っている負債などを全て返済した後で、その会社に財産が残った場合、その財産を自分の保有してる持ち株数に応じて受け取る事ができる権利の事です。
残余財産請求権も単独株主権ですので、1株でも保有していれば、その会社に残った財産を受け取る事ができます。
③議決権
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関ですが、その株主総会に参加して議決権を行使(投票)できる権利が議決権です。
議決権は、選挙のように1人1票ではなく、1株1票です。基本は1単元で1議決権というパターンがほとんどです。
なので、1単元を200株と定めている会社があったとした場合、その会社の株を100株しか保有してない株主は、株主総会で議決権を行使する事はできないという事になります。同様の理由で、プチ株やミニ株などの単元未満株を保有してる場合も、議決権を行使する事はできません。
どちらにせよ、より多くの株を保有してる株主がより大きな影響を持つという事になります。
ちなみに、基本的に株主総会での議決権の行使は本人が行う必要がありますが、本人がその株主総会に出席できない場合、別の代理人に株主総会に出席してもらって議決権を行使してもらう事ができます。
ただ最近は、直接株主総会の会場に出席しなくても、事前にその会社の株主総会の招待通知書が届いた日から、その会社が定める日程までの間に、インターネットからの投票で議決権を行使できるようにしてる会社が多くなってきています。
一番大事なのは議決権!!
ここまで「剰余金配当請求権」「残余財産分配請求権」「議決権」と、3つの主な株主の権利をご紹介しましたが、どの権利が一番重要でしょうか??
この中で一番重要になってくるのは「議決権」です。
先程も紹介しように、議決権とは会社のやり方に口出しをできるようになる権利ですが、その会社の株をたった1株買っただけで会社の方針を変えるほどの影響力をもつことはできません。
どれくらいの発言力になるかは、持ち株数のパーセンテージによって大きく異なってきます。
たとえば、会社の株の51%を1人の株主がもっていて、残りの株を10名の株主が持っているとします。
この場合の持ち株比率は、1人の人間は51%の持株比率で、他の株主はそれぞれ4.9%の持株比率になります。
この場合、もしこの10名の株主が、51%持っている株主1人に、反対の意見を言ったとしても、51%持っている株主の意見が優先されます。
1人1票のような多数決ではなく、持ち株比率ということになります。
これには、社長などの役職は関係なく、一番多く株を持っている人が一番エライ、というのが、決まりになっています。
通常、市場から株を大量に買ったとしても、何か特別その企業の仕事をしなければならなくなるという事はありません。
家でゴロゴロ眠っていようが、外で遊んでいようが、その会社の株をたくさん持っているならその人の影響力が強くなります。
ただし、株をたくさん持っていれば、それだけでなんでも思うように行くかというと、必ずしもそうとは限りません。
日本の場合は特にそうですが、お金だけにものを言わせて人の集まりである会社を思い通りにしようというのは、モラルに反すると考えられているからです。
つまり、あまりえげつないことは、法律では許されても人の心という面から考えて、良しとはされていないという事です。
まとめ
それでは、ここまでの内容を一度おさらいしましょう。
まとめ
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株主の権利は「自益権」と「共益権」に大別する事ができる。
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自益権とは、その株主個人の利益にだけ影響する権利
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共益権とは、その会社の株主全体の利益に影響する権利
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1株でも持っていれば権利を行使できる権利が、単独株主権
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一定数以上の株式を保有してる株主のみが行使できる権利を、少数株主権
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株主の代表的な権利は「剰余金配当請求権」「残余財産分配請求権」「議決権」
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剰余金配当請求権は、配当金を受け取る事ができる権利
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残余財産分配請求権は、会社解散時に残った財産を受け取る事ができる権利
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議決権とは、株主総会で議決権を行使できる権利。1単元1議決権