
ライブドアショックとは
ライブドアショックとは、2006年1月17日に起きた株式市場の暴落のことです。
2006年1月16日に堀江貴文氏率いるライブドアが証券取引法違反の容疑で、強制捜査を受けたことがきっかけで始まりました。
当時の日本はバブル期を彷彿させる好景気であり、株価も上昇を続けていたのですが、ライブドアショックにより、日経平均株価が2日で1000円近く下落し、多くの個人資産家が悲鳴を上げました。
このライブドアショックの原因と、今の私達が教訓として得られることを、当時の体験談をもとにわかりやすく解説していきます。
ライブドアショックの経緯(体験談付き)
ライブドアってどんな会社?
堀江貴文氏が代表取締役を務めていたライブドアは、20世紀末期にインターネット広告・インフラ事業から立ち上がり、2005年頃にはラジオ放送局の筆頭株主となるまで急成長した、大注目の企業でした。
また、堀江貴文氏はメディア出演が多く、そのパフォーマンスにもカリスマ性があり、人気を博していました。
株式分割を繰り返し、1株数百円という株価を実現させ、株式投資のハードルを下げて個人投資家を惹きつけ、順調に株価を上昇させることに成功。
※株式分割とは「株価を1,000円から100円にして、発行株数を10倍にする」のように、資本金をそのままに株式を細分化すること。
多くの投資初心者はライブドアの株を購入し、
当時の東証マザーズ証券の時価総額(時価総額 = 株価 × 発行済み株式総数)は「約10%をライブドア関連株が支えてる」と言われるほどでした。
なぜ株式分割をすると株価が上がっていくのか??
当時は、分割された株を既存の株主が受け取るには、株式分割が行われた日から約2ヶ月の期間を要していました。
この制度が原因で、売りたくても売れない状況が続き、買いたい人がいても売れないので、需要が供給を上回り、株価は上昇しました。
この制度に関しては、平成18年1月4日以降を基準日とする株式分割から、基準日の翌日を効力発生日とする」との改正が行われています。
しかし、そのまま好調というわけには行かず…。
2006年1月16日、
ライブドア本社に、特捜部が強制捜査に入ったというニュースが日本を駆けめぐります。
ライブドア本社や堀江貴文の自宅・新宿の事業所などが突如、東京地検による家宅捜査。
多くの投資家が保有していたライブドア株、堀江貴文氏の逮捕。
この連日の報道は、投資家ではなくても多くの人の耳に入り、日本中で話題となります。
証券取引法違法の容疑で東京地検の捜査を受けたことによって、ライブドア関連の売り注文は殺到し、関連会社の株価は暴落しました。
体験談 1月16日
ライブドアを買ったのは、ホリエモンが好きだったというのが一番の理由で、
この株に関しては、割安だから買ったのではなく、
感情で買っていました。
他の株と同様にライブドア株も順調に上がり、
ものすごくいい気になっていました(笑)
周りからは株で儲かってるんでしょ?すごいね。とか、
株のやり方教えて!とかもてはやしてくる人がいるほどで、
僕も乗せられてその気になっていました。
そんな時、友達がふとこんなことを言いました。
「ライブドアに特捜部が強制捜査に入ったらしいけど、大丈夫?」
「…ま、まじで?」
僕は株をはじめてこの方ずっと、
「最悪なくなってもいいお金だ。」
と思いながらやっていました。
もし無くなったとしても、
そこから得る経験は貴重なもののはずだと思っていたからです。
しかし、心のどこかで、
「半分くらいになるリスクは、もしかしたらあるかもしれないけど、
3分の1とか、0とかにはならないだろう。」
と高をくくっていました。
普通なら半分になるリスクもないだろうと思っていたかもしれませんが、
ライブドア株に関しては割安ではなかったので、
半分になるリスクもひょっとしたらあると思っていました。
つまり、高をくくってはいましたが、
リスクを多めに見積もっているつもりだったんです。
状況を把握するためにすぐさまネットで調べました。
特捜部は証券取引法違反(偽計取引、風説の流布)の疑いがもたれていると言う事でしたが、
どうも誤報であるらしい情報がありました。
ホッとしたのもつかの間、
よく読むと、東京地検特捜部が強制捜査に入ったのが誤報で、
強制捜査に踏み切るのが正しい情報であるとわかりました。
つまり状況は全然変わってなかったんです。
さらに特捜部が動くときはほぼ間違いなく黒と言われています(泣)
このとき、「明日成り行きで売ろう。」と思いました。
※注文時に価格を指定せずに注文する方法を、成行きまたは成行注文と言う。
その日強制捜査に踏み切ることがわかったのは後場(午後の取引)が終わってからのことで、
夕方4時くらいだったと思います。
そんな気はしていましたが、一応念のため、
自分なりに夜中の2時くらいまで調べました。
今の段階では偽計取引、風説の流布の容疑だけでしたが、
もし、粉飾決算などが明らかになった場合、上場廃止になります。
この時点で2通り考えられました。
①.粉飾決算など致命的な違法を犯している→上場廃止になる。
②.偽計取引、風説の流布だけで済む→上場廃止にはならない。
①の場合を想定するなら、売りです。
②の場合は、上場廃止にならないかもしれませんが、
容疑がはっきりするまでは株は売られるでしょう。
ということは、最終的にはライブドア株を持つとしても、
一旦は売りです。
そして②の可能性が低いと感じたので、
当初考えていた通り、売りという結論に達しました。
寝る前に成り行きで持株の650株全て、売り注文を出しました。
この日のライブドア株の終値は696円でした。
僕はライブドア株を485円で650株買っていたので、
ライブドアには31万5250円つぎ込んでいました。
この時点で、自分がライブドア株購入に要した31万は、
もうなくなったものと考えようと自分に言い聞かせていました、、、。
ライブドア株保有者にかなりショックを与えたことが窺えますね…。
ライブドアに容疑がかかった、捜査証券取引法違法とは、一体何だったのでしょうか?
ライブドアの証券取引法違法とは
ライブドアの子会社であるライブドアマーケティングが2004年第3四半期に3200万円の経常損失を出していたにも関わらず、ロイヤル信販とキューズネットで架空売り上げを計上し完全黒字化に見せかけていました。
また、ライブドアは2004年9月期の決算で実際は3億1300万円の赤字だったにも関わらず、50億3400万円の黒字であると偽っていました。
これらの偽造行為が投資家の判断を狂わせる目的があり、悪質だとして厳罰の対象になり、証券取引違法と判断されました。
もともと、ライブドアのニッポン放送買収問題が終結してから、世間の反感を買って、企業関係者やマスコミの一部が東京地検特捜部に様々な情報を寄せるようになりました。
また、ライブドアでの退職に納得がいっていなかった元幹部が告発するなどで東京地検は2005年から捜査を本格化させた背景があり、
ライブドアは強制捜査されるまでに至ったのです…。
しかし、今までの粉飾決済で起きた事件の場合は、ライブドアショックのような、大きな株価暴落事件になることはなかったです。
なぜ、これほどまでに日本の株市場に影響を与えるようになったのでしょうか?
それは、マネックス証券の対応が原因であり、ライブドアショックとは別に、マネックスショックと言われる、もう一つの事件があったからです。
マネックスショックとは
マネックス証券は、ライブドアショックを受けて、信用取引をおこなう投資家が担保にしていたライブドア関連5社の株をに対して、予告なしに、信用取引の価値がなくなったと判断しました。
信用取引の価値がなくなったということは、ライブドア関連の株を担保にしていた投資家たちは早急にお金を返さないといけなくなります。
そうすると、ライブドア関連の株を売るだけではなく、お金を得るためにその他の株も売ろうとする人が増えて、市場全体の株価が下落するという自体が起きてしまったのです。
マネックス証券以外の証券会社を利用していた投資家たちも、マネックス証券と同様の事が起きるのを恐れて、ライブドア関連の株の売却を行いました。
この結果、東証1部に上場している、90%以上の銘柄が値下がりする事態に陥ったのです。
この一連の騒動を、マネックスショックといいます。
体験談 1月17日
この日のライブドア株価:596円 |
次の日、案の定買い手がつかず、
気配値はストップ安(1日の株価の値幅制限の最低ライン)の596円をつけていました。
この状況で気になるのは、
いつこの売りが全て消化されるか、
ということでした。
この日の売り株数は2億株前後でした。
これは発行済みの株式数の約2割が売りに出ているという、
株主にとっては災難な状況でした。
しかし、この日の雰囲気で考えると、
もしストップ安という制度がないならば、
300円くらいで寄り付いたんじゃないかと思います。
ライブドアショックを今から振り返ると、
市場へのインパクトは大きく、
とてもそんな風には思えないかもしれませんが、
まだマネックス証券が何もしていないこの段階では、
多分300円くらいで買う人はいたと思います。
本来投資家を保護するためのストップ安ですが、
これによって、投資家にじっくり考える日数が与えられたため、
売る方にとってはマイナスに、買う方にとってはプラスに働いたかもしれません。
結局、この日は気配値のまま596円でストップ安となり、後場が終わりました。
そして、この日の大引け後、株式市場の全銘柄に大きく影響を与える出来事が起こります。
マネックス証券がライブドア関連株の担保価値を、全て0%に引き下げたんです。
引き下げた銘柄は以下になります。
・ライブドア:70%→0%
・ライブドアマーケティング:70%→0%
・ライブドアオート:80%→0%
・ターボリナックス:70%→0%
・ダイナシティ:80%→0%
これによって、ライブドア関連株を担保に信用取引をしていた人に、
一斉に追証が発生し、他の銘柄を売って換金し、
保証金としてマネックス証券にお金を入れなければならなくなりました。
ライブドアの個人投資家は約20万人いたとされています。
翌日ライブドアショックで最大の下げ幅を記録する日となりますが、
この胃の痛むような全面的な下げは、
こういった信用取引の追証が発生した人たちの換金売りが、
大きく影響していたと言われています。
このマネックス証券の決断は、
ライブドア関連株で信用取引をしていた人たちにとっては悪夢となりました、、、。
体験談 1月19日
この日のライブドア株価:416円 |
18日に下げたライブドア関連株以外の銘柄は、
この日は下げ止まりました。
ライブドアは依然としてストップ安の416円の気配値で、
この日も変わらず2億株ほどの売りが出ています。
僕はライブドア株を485円で650株買っていたので、
この時点で、4万4850円の含み損を抱えています。
買いに要した費用は、
485円×650=315250円
で、31万5250円です。
ライブドアへの強制捜査があった16日の時点で覚悟はしていましたが、
いよいよ本当に自分の出した31万が含み損を出し始めました。
すごく残念な気持ちはありましたが、
それと同時に、
「信用取引をやっていなかった自分は幸運だったなー。」
という考えも常にありました。
売り注文を消してからは、
別の選択肢も浮かぶようになっていました。
可能性として、
①粉飾決算など致命的な違法を犯している→上場廃止になる。
②偽計取引、風説の流布だけで済む→上場廃止にはならない。
があると書きました。
この時点で、すでにおそらく上場廃止だろうと思っていたので、
②のケースは考えていませんでした。
そして、①の場合、上場廃止になるとして、
さらに以下のケースを考えていました。
A.売りたたかれたところを投資ファンドが買収し、株価が多少回復するかもしれないので保有する。
B.上場廃止になっても再上場するまで保有する。
C.やっぱりなるべく高い値段で売る。
Aなら様子を見て上場廃止までに売れるかもしれませんが、
Bならかなり塩漬けを覚悟しなければなりません。
資金がかなりあったならBの選択もあったかもしれませんが、
1年や2年で再上場するとは思えなかったので、
Bはすぐに却下しました。
Aの場合上場廃止直前まで保有することによって、
本来もう少し高く売るチャンスがあるところを、
もし買収されず、株価が回復されなかったら、
本当に底値で売ることになります。
どこかが買収するかどうかなんて、
この時点ではインサイダー情報をもっていない限りわかりません。
したがってAも却下し、結局Cのやっぱりなるべく高い値段で売るという結論に達しました。
体験談 1月24日
この日のライブドア株価:176円 |
ライブドア株は、
この日を含めて6日連続のストップ安を記録していました。
株価は176円で、
僕のライブドア含み損は20万850円にまで膨らんでいました。
株価がかなり安くなってきたこともあり、
いよいよ寄り付くんじゃないか、と見る声が高まってきます。
寄り付き
寄り付きとは、1つの取引時間帯の中で行われる最初の取引のことを指します。
株式取引には前場(9時~11時30分)と後場(12時30分~15時)があり、それぞれ寄り付きと呼びますが、一般的には「寄り付き」といえば前場の1番最初の取引のことを言います。
東証もそれを見越したのか、翌日25日以降は、
ライブドア株に関してのみ、売買時間を、
1時半から3時までの1時間半に限定する、
という措置をとりました。
ライブドア株は株式分割を繰り返していて、
さらに売買単位が1株となっているため、売買単位が異常に多く、
売買が増えることによる、東証のシステムダウンを懸念したためでした。
ライブドア株は、なんと、このとき、
東証の全上場銘柄の売買単位の45%を占めていました。
このため、もし今の状況で2億株ほどある注文が一斉に寄り付いた場合、
東証の処理能力の限界を超える危険があったようです。
ここ数日、売り注文を出していなかったのですが、
そろそろ売れるかもしれない、と思っていました。
この頃になると、開き直ったのか、
値下がりの痛みというか、含み損に苦痛を感じることは、
あまり、なくなっていました。
ライブドアショックが大きな事件となったのは、マネックスショックが相まって、一企業の問題が、株式市場全体(多くの銘柄の株価)に波及したからです。
ライブドアショック:1月25日
結局6日連続のストップ安を記録したライブドア株ですが、
1月25日、数十万株にとどまっていた買い株数に、
ついに異変が起こりました。売買時間が短縮されていたライブドア株は、
1時半からの売買開始を前に、買い株数がものすごい勢いで膨らんできました!
気配値は150円前後です。
僕は板情報を凝視しながらむくむくと膨れ上がる買い注文を見ていました。
「つ、ついに寄り付く!」
そう確信し、自分も売り注文を出しました。
このときの売り注文の株数は約3億株弱まで膨らんでいましたが、
買い注文の株数はすでに売り注文の株数を超えていました!
パソコンのスピーカーの音量はゼロにしていましたが、
モニターからゴゴゴゴゴゴ、、と地響きが聞こえたような気がしました(笑)
売買開始の1時半になってもより付かず、
150円から160円の付近を気配値がうろついています。
まさに今、寄り付くと見ると、売り気配が強気になり、
165円くらいまで上がっていきました。
その後も気配値は激しく上下しましたが、
絶対に売ろうと考えていたにーちゃんは、
そのとき3億株弱の買い注文が出ている155円で、
指値の売り注文を出しました。
すると、一瞬にして約3億株の売買が消化され、
7日ぶりにライブドアの株価が155円で寄り付きました!
「自分が指値したから155円で寄り付いたんじゃないの?」
一瞬そう思いましたが、一挙に約3億株も消化されているので、
当然多くの人が155円を意識したのだと思います。
この瞬間に、21万4170円の含み損が確定しました。
結局ライブドアに投資した31万は3分の1の10万になってしまいました、、、。
ライブドアショックのその後
結局、ライブドアは最終的に94円の値をつけ、上場廃止となりました。
僕はライブドア株で21万4170円の損失を被りました。
授業料としては高すぎですが、ライブドアショックでは、いろんな経験が凝縮されていたと思います。
日経平均の下げ幅が700円を超えたときの心理状態。
売りたくても売れず、自分の保有銘柄が6日連続のストップ安で、含み損が毎日膨らむ時の気持ち。
ライブドアは粉飾決算をしたかもしれませんが、
今では、やっぱり自分の判断が悪かったと反省しています。
”好きな企業=良い投資先”ではなかったんです。
それを忘れないためにも、
ライブドアショックを記念して、
ライブドア株は今でも1株だけ保有しています。
将来再上場するかもしれませんし、
証券会社にお願いして、郵送で家まで送ってもらうかもしれません。
しかし、それでも株を続けている今思うのは、
値下がりの恐怖が自分の限界を超えたのはいい経験だった、
ということです。
もしみなさんが僕のように、
思ってもみない暴落に見舞われて、
含み損で精神に負担を感じることがあったら、
「この恐怖が将来自分の糧になる。」と思っておいてください。
ライブドアショックから学ぶ教訓
このライブドアショックの体験談は、ライブドアショックの恐怖をより感じて、反面教師にしてもらうつもりで掲載しました。
みなさんはこんな経験をしなくてもいいようにと書いているのですが、やはり値下がりの恐怖に関しては、文字では伝えられない部分が多いです。
いくら投資額が5分の1や0になるとしても、ほとんどの人は生活に必要な資金を投資していないはずです。
余剰資金で投資をしておけば、
もし、再びライブドアショックのような事件が起きたとしても、生活に支障が出るようなことは絶対にありません。
そう思って大船に乗ったつもりでいてください。
それが最良の恐怖対策です。
このライブドアショックが私達に教えてくれたことは、その企業がいくら順調そうに見えたり、どれだけ多くの人がその株を買っていても「株価が下落することはある」ということを頭に入れながら投資をすることです。
ライブドアショックで借金が残ったり、多くの損害を被った人は、
①生活用の資産を投資に使っていた
②信用取引を行っていた
③ライブドアのみに大金を投資していた
上記の3通りあります。
投資資金は余裕資金であり、生活用の資金を利用する事は「もしものとき」が起きたときの為に必ず避けてください。
また、よく言われることですが、1つの銘柄に絞るとなにか起きた時にダイレクトに損害を受けることになります。
投資金額を分散して色んな企業に投資をする、分散投資を行うようにしてください。
分散投資に関しての投資方法として、インデックスファンドがオススメなので参照記事を載せておきます。
最悪の事態を避けるという努力は継続しながら、慎重に株式投資を行い、資産形成を成功させてください。